東野圭吾先生の小説「プラチナデータ」感想

その他

※本記事はネタバレを含みますのでご了承ください。

今更ながら、東野圭吾先生の小説「プラチナデータ」を読みましたので、雑多な感想記事を残します。

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安定の東野圭吾クオリティ。

東野圭吾さんの作品は、これまでにガリレオシリーズやマスカレードシリーズ、他ノンシリーズ作品含め色々な作品を読んできましたが、SF系はあまり読んでいませんでした。

本書は、DNA情報による捜査システムをテーマにした作品で、難しい言葉が多く、序盤は少し理解に時間がかかったりしましたが、読み進めているうちにページをめくるのが止まらなくなりました。

やはり東野圭吾先生の作品は、すごく引き込まれますね。

ヘヴィーな話を中心に物語のタネが巻かれていく展開

最初は、NF13という連続殺人犯の話であったり、
多重人格で反転剤というもので「リュウ」という人格と入れ替わっているという神楽の話、
著名な陶芸家だったが、コンピュータにより完璧な贋作を作られ、それを見抜けずに心を病み、自殺をしてしまった神楽の父の話、
顔の痣のせいで幼くして心的外傷を負ってしまった天才数学者蓼科早紀の話、
などなど、ヘヴィーな話を中心に物語のタネが巻かれていきます。

これらがこの先の結末にどう繋がっていくのか、この時点では全然予測はできません。

中盤では、アメリカから派遣された研究者白鳥里沙の登場や、神楽の逃亡のシーンにかけて、散り散りになっていたパズルのピースが埋まっていくかのうように、情報が少しずつ明らかになってきて、物語にぐっと引き込まれました。

だけど、結局最後のピースは最後まで埋まらないんですよね。このあたりはさすがの東野圭吾先生クオリティです。読者に気づかせる部分と気づかせない部分の匙加減が上手です。

蓼科兄弟殺人の犯人について

物語の最後に明らかになる蓼科兄弟の殺人犯に関しては、最後の最後までわかりませんでした。でも知った時は普通に納得感があり、「逆になんで気付かなかったんだ!?」と思ってしまいましたw

よくよく考えると事件があった病院で自由に動ける人間なんて、かなり限られていますからね。それでも気づけなかったのは読者の想像を超える存在であるリュウというミスリードがかなり効いていたからだと思います。

ちなみに、神楽と過ごすスズラン=想像上の存在というのは、なんとなくそうだろうな、って早い段階でわかりました。明らかに神出鬼没というか、物理法則的に色々おかしかったので予想はつきました。

リュウが両手で包むような絵を描いていたというのも、最初は意味がわからなかったですが、知った瞬間にすごく温かい気持ちになりました。

リュウ(神楽)が父親のことをどれだけ好きで、どれだけ尊敬していたが伝わるエピソードでした。

それだけに、父親がコンピュータの贋作によって自殺に追い込まれた一件は、ひどいショックだったのでしょう。

黒い社会

DNA捜査システムを使えば、どんな犯罪であっても、容疑者を絞ることができる。
それは、政治家や官僚など社会的な地位・影響力の高い人間であっても例外無く。
そこを隠し、そういった上の人たちの犯罪を隠すのが「プラチナデータ」

黒い、黒すぎる・・・

これはあくまでフィクションですので実際の社会とは無関係ではありますが、実際の社会でも、国家権力のトップの汚職問題というのは何かしらの手によって揉み消されたり、証拠を消されたりされているんだろうな、と改めて想像してしまいました。

DNA管理システムについて

国が国民を管理するというこの管理システムについて、物語の中では、国民の多くが難色を示すという結果となりました。

治安を良くするためとはいえ、国民一人一人が国に管理されてしまい、自由が奪われるのでは無いか?家族から犯罪者がでたら差別されるのでは無いか?などの不安から、積極的にデータを提供する国民が少ないから。

それでも、時が経つに連れて徐々に国民がそれを許し、データ自体は増えていきます。

ここらへんも、フィクションであるとはいえ、とてもリアルに感じましたね。

特に、序盤の方で「国民の反対なんかは関係ない。それに国民だって怒っているのは最初だけで、すぐにその状況に慣れていく」と言っていた神楽の台詞はとても印象的でした。

「国が国民を管理する」という意味では我が国のマイナンバー制度なども同じですが、マイナンバーも施行当初は「国に管理されるのは怖い」「セキュリティが危ない」など批判されていますが、2020年現在では、そういう声もあまり聞かなくなってきました。

私としては、生まれも性格も異なる多くの人間たちが秩序を持って共に生きていくためには、ある程度の管理は必要なのではないか、と思いますね。

終わり方について

ネットのレビューでも多くの方がおっしゃっていますが「問題が解決しないまま終わった感」はたしかにありますね。

結局モーグルは回収されてしまい、プラチナデータの存在は闇の中に葬られたまま。
偉い人は犯罪し放題。神楽も国家権力による脅迫を受け、一切手出しができず。

黒い社会は黒い社会のままで物語が終わってしまいます。

ただ、結局これが現代国家のリアルで、この構造を解決することは最早不可能なのかもしれない、というのが本作のメッセージと私は捉えました。

それでも、最後に病室で再開することが出来たリュウとスズランの幸せそうな姿を見て、とても素敵な気持ちになれました。

二人には天国で再開して、幸せになってほしいものです。

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